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アベノミクスを超えて...

直言 第2回

2014年01月01日

内外政治経済

所長
稲葉 延雄

 昨年の日本経済は、アベノミクスの第一の矢(金融)と第二の矢(財政)で勢いがついた感がある。この先、本年の日本経済の基本テーマは、技術進歩を起点にした民間設備投資と雇用の増加、すなわち真に経済が自律的で広範な成長を持続していけるかである。

 世間では、第三の矢である政府の成長戦略に期待する声が今なお根強く存在する。しかし、ここは民間企業が様々な人々のニーズをしっかりと汲み取り、新しい技術で応えていくことで人々が高い満足感を得られるよう、より豊かな経済社会の構築に貢献していくべきであろう。その意味で、民間企業が日本経済の成長の担い手となってアベノミクスを超えていかねばならない。

 折しも、日本企業を含む先進製造業にとって有用な技術革新の新たな潮流が、いよいよはっきりとしてきた。特に注目されているのは、センシング・デバイス(感知装置)とコンピューターを組み合わせた技術である。最近の代表的な応用例としては、自動運転の車の開発が挙げられる。人々の知覚を補助し、認識を支援することで、より安全で快適な生活をもたらす。医療や介護の現場での応用も考えられる。また、地域のセキュリティーや農産物の生育監視のためのフィールド・モニタリング(広域監視)などへのビジネス展開も始まっている。

 一方、小型ロボットや3D積層造形装置の技術進歩は、先進製造業のサプライチェーンに抜本改革をもたらす。今や我々は「第三次産業革命」の最中にあるとの見方も出ているぐらいである。人類はこれまで大量生産でコストの引き下げを実現してきたが、こうした技術と電子的な設計図との組み合わせにより、少量でも安価に生産ができる体制となる。

 このため、低賃金を求めて中国をはじめとする新興国に大量生産拠点を置いてきた企業も、これからは消費地に近い先進国にも分散的に生産拠点を戻すことができる。現に英国では、生産拠点を中国や東欧に移すより、英国本国に戻す企業の数が初めて上回ったという調査結果が報じられている。ユーザー一人ひとりの個性や好みが一段と尊重され、より付加価値の高い財・サービス生産が始まる。

 このほか、ITの分野ではクラウドやビッグデータなどの活用による経営革新が実践段階に入っている。上述した新たな財・サービスの開発やサプライチェーン管理の変革を、ITの側面から支援していくことになる。技術革新の新たなうねりの中で、日本企業はその先頭集団に位置する。こうした新技術をうまく活用して、日本経済のみならず、世界経済の拡大・成長に大いに貢献していくことはまず間違いない。

稲葉 延雄

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※この記事は、2014年1月1日に発行されたHeadlineに掲載されたものを、個別に記事として掲載しています。

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